北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

『サイボーグ009 BGOOPARTS DELETE』15話の感想

チャンピオンRED 2021年 01 月号 [雑誌]
チャンピオンRED 2021年 01 月号 [雑誌]

 紙版チャンピオンREDだと付録に石ノ森版『サイボーグ009』のクリアしおりが付いてくるんですが、今号の表紙&巻頭カラーはそれの岡崎版というコンセプト。似てるけど明確に違う、とよく分かります。

 それとコミックス2巻がもうすぐ発売……かと思ったら発売中でした。しまった。チャンピオンRED買うときに一緒に探すべきでした(紙派)。また探しますw

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神話復活編⑮

 アポロンは正々堂々を望む割にアキレスとの2連戦を認めていて少し気になってたんですが、そこへのフォローがあったので安心しました。回復時間はくれる。休憩したところで完全にフェアにはならないだろ、とか思わんでもないですが、同じ加速装置持ちとして消耗した脳の酸素、それの回復時間を正確に把握できる。らしい。ちょっと息を整えて治る程度の疲れなのかは分かりませんが、アポロンなりに理屈をガチガチに固めてきてるのが面白い。疲れを数値化するようなアプローチは理詰めの度合いが高い岡崎版らしいアイディアだったと思います。
 そして、そんな疲れと休憩の話、単に009vsアポロンの話だけでは終わらないのが本話の白眉。結局は人間の部分が残ってるので云々。このあと、ヘレナの真の能力が明らかになるんですが、その本質がまさに機械と人体の融合だったのですね。アポロンとヘレナは別々の場所で断る話をしているようだけど、それらを漫画として俯瞰した場合、共通するテーマが通底しているのが分かる。
 さらに言うと、009と003がそれぞれ本作のタイトルにもなってる「削除(デリート)」と口にし、それを聞いたアポロンとヘレナがブチギレ、いよいよバトル開始、という流れも同じ。いや、ヘレナがブチギレってのは言い過ぎですけど、「戦うしかない」と区切りになったのは確かだと思います。

 原作の設定を踏まえた「こういうのが見たかった!」な場面としては、ブチギレたアポロンが戦闘態勢になった1コマ。右手の指からは光線、左手の手のひらには火球と原作通りの能力を用いてめちゃくちゃかっこいい決め絵を見せてくれるから嬉しい。まぁ、地面が溶けて危ない気もするんですが、アポロンの怒りが炎となって顕在化した、という象徴的な1コマだったと思います。

 003とヘレナ。ぶっちゃけ2人が戦うのがイメージできてなかったんですが、003の「削除」という使命を聞いてヘレナが殺されるか殺すかしかない、と踏ん切りを付け、先に殺される方を選んでから……と念入りに誠実さを示してから戦闘態勢に入る。回りくどいんですが、その回りくどさがキャラクターの魅力だったと思います。2人とも言い分が乙女全開というか。
 ヘレナの能力の関係上、服と肉が透けて見えるんですが、これは漫画的な演出であると同時に「003なら実際に見て確認できる」という話でもありますね。ヘレナの口頭の説明だけだと実感しにくい能力なんですが、003ならそれを「たしかにその通り」と確認できる。ここもマッチメイクの妙でしたね。

 002、006、007サイド。002と006が同時に敗れ(破れw)、右手にスーパーガンを持った007が悔しそうな表情を見せる開幕が衝撃的なんですが、ポイントは007だけ全身が映っておらず、左手が隠されてる点ですね。007の能力でそんな使い方をするとは驚きでした。やりすぎというか、かなりギリギリのラインだったような気もします。『天使編』などの完結編ではゼロゼロナンバーの能力がいわゆる「覚醒」するんですが、007の今回の能力はその覚醒に近い飛躍も感じなくはない。ただ、「何にでも変形できる」というルールには忠実なのでアウトだと言い切ることもできない。ヘレナみたいな新能力ではなく、あくまでも原作の拡大解釈という範疇。故にギリギリという印象w 「風船だから」「使ったら手を痛めるデメリットもあるから」とフォロー的な話が念入りに出てくるのも面白かったです。さすがにリスクなしにあの技を連発したら逸脱しすぎなのでしょう。
 大胆な解釈ではあるけど、007の演技力ありきの大技でもあるので、そういう意味でかなり面白かったです。単なるスーパーパワーのアイディアだけでは終わらず、このキャラだからこそこの能力、と腑に落ちるのが良い。
 てか、この007の大技も後のヘレナの能力に繋がってたのかもしれませんね。能力を極めることで人間の体から離れていく。漫画の話的な繋がりもそうだし、劇中の科学技術としても、ヘレナのあの能力は007に用いられた技術を元に作られてる気がします。

 
 終わり。バトルが加速するに従って岡崎版の新解釈、独自設定が次々に出てきてそこが大きな見せ場になってきてますね。偉大すぎる原作があるので、読者がそれぞれ「これはアリ」「これはうーん……」みたいな読み方をするのも一興なのではないでしょうか。
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