北区の帰宅部の意訳

映画の感想を書きます(希望)

週刊少年ジャンプ2023年52号の感想

 まさか『ゆらぎ荘の幽奈さん』の新作情報が飛び込んでくるとは……(過去にPS4用に出たゲームのsteam版が突然リリース)

背表紙

 「ジャンプキャラクター初登場シーン集」。最終回。凶一郎。初登場ということで先生を名乗ってた頃。今ではほぼ限りなく死に設定と思われるネタで面白いな。もう学校に行くこともないだろうし。

表紙

 新連載。緑の圧が強いタイトルですが、主人公の髪と瞳も緑であった。巻頭カラーはもっと徹底しててすごい。

読者プレゼント

 泉の女神。ネタとしては定番だと思うんですが、そこから金、銀、ビーナスなどのキーワードを引っ張ってきてダジャレを連発する。なかなか良かったのではないでしょうか。斧でオーノーみたいな方向も攻めれたと思うんだけど、そんなの頼らなくて充分なので……みたいな余裕を感じる。「ぶっ飛ビーナス」の強引すぎる語感とかも含めかなり好きな回。

巻頭カラー『グリーングリーングリーンズ』寺坂研人

 新連載。ゴルフでござんす。たしか読切で賭けゴルフみたいな話やってたと思うんだけど、冒頭の「スポーツのすごさを何でも金額で理解する」くだりにちょっとだけ面影がありますね。今後もうちょっと出てくるかもしれない。
 主人公は高二。スポーツの価値を金額で換算する癖が彼の冷静さというか、「どうせ無理だから」みたいな引いた立場、冷笑にも近いが諦めというのが一番近いのかな。そんな彼が高三のゴルフガチ勢の女子と出会うことでゴルフの世界を知ることになる。なるほど、ここでも女子選手が出てくるのか。マイナースポーツだが、どれも女子のプロ(最前線)の世界が豊かな競技で、それでいてヒロインがその世界の先輩。『アスミカケル』『ツーオンアイス』と共通する特徴。意図的な一致というより、ヒロインの「○を甲子園に連れてって」的なキャラクターに幻想を抱かなくなった世相の反映なんだと思う。別競技だからこのラインとは少し違うけど『アオのハコ』もそうね(一応◯ちゃんも別競技のプレイヤーではあるのだが……)。そんなことを考えると、世界で一番女子のプロスポーツが盛んであると思われるバレーボール漫画の登場が予想されるんですが、『ハイキュー』が偉大すぎるのでしばらくはあり得ないと思います。まぁ、『スラムダンク』の後でもバスケ漫画はヒットしたので、しばらくしたら全然あり得る。
 そんなヒロインとの出会いと交流。ほとんど本話はここに費やされるんだけど、丁寧で良かった。主人公が好奇心で近づくが、興味本位であるせいで失礼な態度になったりする。だが、たまに核心を突くというか、普通に好印象なことも言ったりする。この揺れがリアルで面白い。 “プロ目指してたりする…?” の質問自体は彼女の本気度合いに気づき、尊重するニュアンスがあるので、彼女も心を開きそうになるんだけど、その直後に金の話をしてシャットダウン。この機微が良い。彼としては「世界一稼げるスポーツ」という一面を見て彼なりに尊敬の念があったとは思うけど、あまりに表面的な見方なのでゲンナリという。コミュニケーションって難しいですね。
 地雷爆発だが、すぐに “100球もありゃ打てるようになるっしょ” と実行。この行動力が彼の良いところであり、そこにヒロインは感心しかけてたのでしょうね。そんで、その100球という実績があることで、今度は彼女の方から近づいてくる。ここで初めて2人は通じ合って、尊敬し合う関係になる。そのままレクチャーでレベルアップ、からの会心の一打。2人の交流がそのまま主人公の「ゴルフにハマった瞬間」になっててめちゃくちゃ良い初回だったのではないでしょうか。かなりシンプルで、人によっては地味かもしれないけど、個人的にはかなり好き。
 8番アイアンで145ヤード。どのくらいすごいのかは分からないけど、主人公の持つ、彼自身が気づいてない才能という感じか。野球では良い球投げてたらしいので、強肩? とかそこらへんの資質がゴルフに合致したのかな。あとは単純にタッパとか筋力。才能を秘めた男性主人公がある一点のみにおいて女性先輩を一瞬で追い越していく。そんな感じかしら。やっぱ女子選手も平等に扱うんだったらやっぱこういう筋力の差みたいな話になってしまうのかな。本作で言えば飛距離、『ツーオンアイス』だとジャンプの回転数。

『アオのハコ』127話

 インターハイ予選に向けた話になるらしい。スポーツ漫画としての側面が強くなってきそう。あまりメインでは扱われなかった雛も今度は出てくるかもしれない。ただ、あまりに独りの競技で他のキャラとの絡みがないんだよな。どうすんだろ。てか、新体操部をエロい目で見る男子の存在は割と笑えないくらい有害というか、それでスランプになったりする選手もいそう。本作がそこまでやるとは思わないけど、高校スポーツの闇が垣間見えた気がする。
 女子バスケ。久々に夢佳。すっきりしたなりに目つき悪くて最高である。が、独りの千夏の前に独りで現れる夢佳というのはちょっと幻想感あるというか、イマジナリー夢佳みたいな印象も少しある。もちろん「2人だけの世界」というロマンチックな描写なのは分かるんだけど、交通事故で夢佳が亡くなったことを受け入れられないままでいる千夏、みたいな話になってもおかしくない雰囲気。別の作家だったら。
 ガチスポーツ強化月間に入るのかと思ったら兵藤妹によってラブコメブーストしてくるので笑う。新一年生の後輩たちが同時に大喜と絡む良いエピソードの予感。スーパー偶然で遊佐兄も登場したりしないかしら(しないぞ)。
 大喜のプレースタイルは兵藤兄とかなり近いものがあるらしい。そのスタイルが人格と不可分なのだとしたら、兵藤妹が大喜に惹かれるのはブラコンに由来するのかもしれない。遊佐弟も別方向のブラコンだし、ブラコンしかいねぇな(物語的にその方が面白いから仕方ない)。

ONE PIECE』1099話

 くまによる「一人革命」。悪魔の実がある世界なら全然あり得る話だと思うし、溜めに溜め込んだくまの我慢が革命という形で爆発することにはカタルシスも感じるんだけど、一人革命をしてそのまま王様になるのはちょっとヤバさも感じてしまうな。まぁ、駆け足で語ってるからそう見えるだけかもしれないんだけど。ワポル後のドルトンとかなり近い話だとは思うけど、くまに関しては「長続きしねぇだろ……」と感じちゃう。まったく別の要因で実際に長続きしないんだけど。
 そして海賊へ。姑息な策略を仕掛けられてもある程度は己の暴力のみで解決(サバイブ)できてしまうところが痛快でもあり、やっぱり「長続きはしねぇだろ……」感。

センターカラー『キルアオ』31話

 サーフィン合宿をする家庭科部。それはさておき、突然の橋本かんなは笑う。雑すぎるよ。田村隆平作品みたいな明け透けさだ。
 そんな橋本先生、サーフィンには自信ありという都合の良い逸材。基本から理屈に沿って教えていくのは地味ながら全うで好き。そういう教え方、そういう成長の仕方の方が十三には刺さる、とリアクションを見なくても分かりますね。成長することの喜びを知った中年好き。
 そんな中年、超中学級おっぱいでもハスハスしない。前回もあったけど、このくだり好き。十三の変人性だけじゃなくて、彼女も相当おかしいのよ。ハスハスじゃねぇのよ。
 サーフィンはさておき、合宿ということで、消灯後の恋バナ。別の話題で盛り上がる可能性もあったと思うけど、ラブコメがうごめいてるこのコミュニティだったら恋バナになるのもやむなしなんだろうな。そして、オッサンにとってはマジで1ミリも興味ない、という温度差が良い。

『SAKAMOTO DAYS』145話

 真冬の回想。親父への憎しみと兄貴への愛憎。そこにORDER育成施設というシステムが絡んでくる。ORDERへの執着が今まで謎でしたが、それが兄貴との思い出と共に明かされてスッキリ。正直そこまで劇的というか、意外性のある話ではなかったけど、それでも2点が同時に解消された気持ちよさはある。そしてその気持ちよさのまま、バトルが次の段階へともつれ込んでいくという展開も熱い。やっぱバトルが中心ですからね、しっかりそこに回収されていくので嬉しい。正直「まだORDERには勝てねぇだろ」って印象なんですが、シンも含めて3人仲良しなんで、そこで思わぬ化学反応をしたら一矢報いるくらいはあるのかもしれない、みたいな期待。いや、第一の目的は真冬の爆弾の除去か。忘れそうになってしまったが、兄貴だったら確実に話が通じるのでそっちの話にならないとおかしいわ。とりあえずバトル続行してるオサラギがおかしい。

『呪術廻戦』243話

 漫才。ケンジャクがツッコミに回ると思ったんだけど、普通にボケる。ボケに徹することでその場の方向性を決定づける、みたいな感じかな。高羽の未練を解消し、同時に「終わっちまったな……」とエモさに浸らせることで高羽が自ら終わりだと納得するようにした、みたいな。
 ケンジャク(夏油)の顔ファンという女性ファンを出すのとか、相変わらず芥見先生はちょっと引くほど意地悪だ。ただ、「抜糸して」は笑った。一発ギャグとして定着してるなら見てみたかったなw
 ただ、芥見先生、漫才の夢の舞台とかそういうお笑いをエモめに語ることに対しては意外とストレートというか、割と素直に酔いしれてそうな雰囲気があって意外だったな。私は正直苦手で……。
 んで、乙骨パイセン。映画の因縁が再びって感じの絵面でなかなか熱い。まぁ、関係ないんだけど。
 ケンジャクは死にそうだが、意志は受け継がれるらしい。話の流れ的にコンビ解消した高羽がR-1目指す話になると思う。

センターカラー『僕とロボコ』163話

 円ちゅわんと映画デートのはずだが、将棋センターへ。円ちゅわんが変貌するまでまったく気づかないボンドはかなり無理あるんだけど、まぁそれも込みで様式美みたいなところあるな。あの顔芸を日常として受け入れるようになってたらそれはそれでイヤだし。
 新作顔芸としてのメルエム。ジャンプ漫画の中のボードゲームにおける最強プレイヤーをすっかり忘れてた……。灯台もと暗し的な面白さもあるんだけど、一応あの漫画における対局ってめちゃくちゃ愛情深い交流だったので、デートとしてメルエムネタが出てくるのは意外と適切というか、パロディなりにめちゃくちゃロマンチックな話になってると言えるのかもしれない。
 んで、気づかないうちにガチプロに一目置かれてた、という今後が気になる終わり方。円ちゅわんが将棋で長期エピソード担当する可能性あるのね。いくら何でも『高校生家族』すぎると思うんだけど、ひょっとしたら宮崎先生的にはもっと早い段階からこういう話をやりたかったけど、さすがに被りすぎだからほとぼりが冷めるのを待ってたのかもしれない。幼女が将棋……あまりになのよ。ギャグ作家と将棋好きの因果関係とか考えたくなってしまうくらいだ。

『夜桜さんちの大作戦』204話

 双子のスタンプの続き、というか一気に残りを解消しに来た感じ。ペース配分がおかしい気もするんですが、「スタンプのことも忘れてないよ!」というのは素直に嬉しい。
 話としては、ひふみの悔し泣きが止まらない。おじおばたちが涙を止めようとあれこれやるのが楽しいんだけど、最終的な解決である長男案がめちゃくちゃ良かった。止めようと必死になり、それがパニックに繋がるせいで止まらないのであって、冷静になって自分の涙と向き合うことで涙を出し切ることができる。そんな話だったと思う。これは真理だと思う。実際にここまでスムーズに止まるかは知らんけど、理屈としては正しいし、涙を通じた成長(今後の涙はコントロールしやすくなる)としてはマジで正解なのではないか。普通に感動……というか感心してしまった。

『鵺の陰陽師』28話

 新しい隊員の顔見せ。かと思ったら急に妹とか言い出すのでひっくり返った。急すぎるだろ。普通に「どこかの週で1話読み忘れてる?」とか不安になるレベル。マジで急すぎる。そして学郎を中心に、あの手この手と女性キャラの属性をぶっ込みすぎである。欲張りセットすぎるよ。そのうち幼馴染とか許嫁とか出てきそう。もうこうなったらマジで出てきてほしいレベル。あとはバブみ的な方面も空いてるか。鵺さんはちょっとニュアンス違うし。
 そんな急すぎる妹に対して学郎が大真面目に困ってるので「そんなシリアスになられましても……」と軽くついていけない。ただ、ここでも学郎のコミュ障という要素が出てきたのは良かったな。「明るく振る舞うことで空気のバリアを張る」とかめっちゃリアルで好き。コミュ障の困るシチュエーションあるある。
 妹の次は父親まで出てくるのでたまげたぜ。いや、これは初期の回で出てきた細かい情報を私が忘れてる可能性もあるかもしれない。

『ウィッチウォッチ』134話

 幼稚園に通うようになる。『スパイファミリー』が始まった頃、それなりに楽しく読んでたんですが学園の話が増えてきて飽きて読むのをやめたことを思い出した。幼稚園、普通に続きそうな雰囲気もあるが、やるにしても極たまにくらいだといいな。
 幼稚園での魔法無双。知らん魔法が使えるようになっててビビった。『鵺』と連続して読むとマジで「先週のジャンプ読んでないのか?」とか心配になってしまう。
 幼稚園の苦手意識と知らん魔法でかなり興味は薄れてたんだけど、「横向きの街」の絵面が最高のスペクタクルでワクワクしてしまった。チョロい。篠原作品の理屈っぽい魅力と絵的なハデさが見事な形で結びついた傑作回と言えるのかもしれない。

『あかね噺』88話

 掘り起こし。圧倒的に余計な手間が多い作業で、そのくせ掘り起こしに気づいて評価してくれるのは一部のみ。ただ、大舞台で、しかも配信なんかされた日にはその「一部」の人がビビットに反応し、その評判がどんどん広がっていく。通好みな芸風が実は配信との相性がめっちゃ良い、という解釈が最高に面白かった。ものすごく説得力を感じる。要するにオタク心をくすぐる、反応を誘うのがうまい(結果的に)。ここで恐ろしいのが、この配信される落語会と似たような状況がおそらくジャンプでも発生してる。発生しうる。ジャンプ読者の中で落語好きな人だったらかなりの高確率でどこぞのSNSで「こんなマニアックなものを出してくるとはやりますね……」的な発言しちゃうでしょ。私なら絶対するw ジャンプというファンコミュニティをもメタ的に取り込んだ話になってて本当に見事だったと思います。

センターカラー『アスミカケル』23話

 フキダマリ優勝のエピローグからの次章(おそらくプロの世界)に向けた橋渡しのようなエピソードなんだけど、この構成が面白い。謎の回想っぽい語りでサクサクと進んでいくんだけど、このナレーションが「いつ」「何」の話をしてるのかが分からず、それが明らかになっていく場面(明らかになったりまた次の場面に飛んだり)でものすごい没入感が生じる。俯瞰のカメラがそのままカットを割らずにダイナミックに動き出す、みたいなそんな高揚感。実際のカメラの動きを描写してるわけではないのでややこしい感想ですが。プロの戦いの応援っぽい雰囲気になったので「二兎のデビュー戦に飛ぶのか?」と思ったら、応援する二兎の姿が映し出されて、次ページの見開きでは奈央さんが躍動、という気持ちよさ。ナレーションによるダイジェスト的な進行ならではのアゲ感でした。
 金ちゃんが仲間入りしたと思ったらプロの世界にはそれにも負けないくせ者揃いだった、というラストの畳み掛けも楽しい。漫画なので根っからのくせ者がほとんどだとは思いますが、プロの世界なのでセルフプロデュースとしてそういうキャラクターを演じてる面もあると考えると結構リアルな気もしてくる。相撲ではあり得ない興行の側面が強い世界ならではの特徴なのではないか。
 メガネを渡す二兎と、メガネを奪うムエタイ野郎という対比もキレイ。二兎のこのギャグ久々に見たので不意打ち的な意味でも笑ったわ。露骨に「寝取られ」を打ち出してくるのも無理矢理で好き。

『アンデッドアンラック』185話

 ラーメン作り。リップの不治でキャベツを切るのはくだらなすぎて笑った。ちょっと悔しくなるくらい笑ってしまった。素直に従うリップの姿が既に面白いんだけど、「切られたキャベツの再生を防ぐことで切っても鮮度が落ちない」という理屈の部分は普通に感心しちゃった。新鮮さと不治が一瞬結びつかなかったんだけど、言われてみれば納得。いやしかしマジでしょうもないなw
 その後、割と真面目な感じに話が移ったけど、来週の風子ラーメン実食の際にも否定の料理大喜利みたいな要素あるといいな。もっと欲しい……。

『逃げ上手の若君』135話

 歴史的に「あった」とされる味方陣営の蛮行をどう処理するか。松井先生の屁理屈で「汚れ役を買って出た」としたこと自体は歴史を扱う上での工夫(苦悩)で面白かったんだけど、その理屈自体は正直ちょっと納得できないというか、物足りない印象。若に対して刀を抜いたことへの印象とはとてもじゃないが釣り合わないというか、「そんなわけあるかい」となってしまう。
 が、夷だから善悪の区別が元々ない、という言い分には同じく「そんなわけあるかい」と思ったので、松井先生がその歴史的な証言にNOを叩きつけたこと自体はかなり賛成というか「さすが!」となった。何とも複雑な回であった。

『カグラバチ』11話

 妖刀を作る素材。それを安定的に扱えるようにシャルの肉体を利用する。実験室の隅に闇に包まれた檻が配置されてるコマとかやっぱ最高ですよね。本作はこういう省略による決め絵が本当にうまい。まぁ、実際のことを考えると「そんな近くにしなくてもいいんじゃない?」とか思わなくもないんですが、やっぱあの一枚絵としての魅力には抗えないものがある。
 味方幹部(というか精鋭)が勢揃い。和モノで刀ということもあってちょっと『BLEACH』的な連想もしてしまうな。「いやまず最初にこの仮面の説明してよ」という圧倒的な違和感を配置したまま放置するのとか、やっぱ面白いよね。あとはメガネくんが中心になってたのが嬉しい。終盤に近づくにつれ、メガネらしい言動が多くなっていき、最終ページではついに “完全無欠の作戦” と言いながらメガネクイッしてくるので最高。

『電車田中』EITI

 読切。ジャンプショートフロンティア。タイトルロゴが本気すぎて好き。こんな場末の読切でもこんなタイトルロゴの外注ってしてくれるのかしら。作者自身がやってる可能性もあるけど、だとしたらまた別の才能を感じる(大穴で担当)。
 本編。1人用の電車がある世界。良い! 意味不明設定が突如としてぶっ込まれるけど、それに対する説明もツッコミもなく進行していくの超楽しい。ショート読切ならではの味わいだと思う。この世界の住人である登場人物はこの謎設定を謎だとは認識していないので……という不思議世界。
 主人公が「物語」らしいものを始めるんだけど、それが恋人にふられて傷心中。不思議世界でものすごく現実的な苦悩の話が始まるので読んでて「いやこっちはそれどころじゃねぇのよ」ってなる。本人は大真面目に傷心に浸ってるのが逆におかしさを誘う。本作は全体的に面の皮の厚さが感じられて良いですね。真顔のまま最後まで嘘を突き続ける胆力。
 真面目に考えるならば、ビジュアルを除けばこの設定は意外と不思議じゃないというか、タクシー運転手とかで代替可能な話だと思います。タクシーの運ちゃんが相談に乗ってくれて思わぬ救いを得る、みたいな話、大人向けの作品では全然あり得るタイプなのではないか。「目的地」のくだりもタクシーなら全然現実味のある話になる。要するに、それをこのビジュアルで、深刻に悩む傷心中の少女と掛け合わせたのが面白い。
 絵的な盛り上がりと主人公のエモの爆発という意味でクライマックスだったのが線路の交差。これ電車らしい要素ですごい良かったですね。無数の人たちと一瞬ですれ違っていく、というかなりの割合の人が経験あるであろうあの一瞬にヒロインの苦悩と、人生の交差という要素をぶっ込んでくる。ナンセンス系かと思ったら最後の最後にしっかりエモいし、絵的な盛り上がりがゴージャスなのでなんか「良いもん読んだな……(よく分かんないけど)」となる。とごまかされる。最高。
 ほとんどのことはタクシー運転手で代替可能って書いたけど、最後の “私にも少し持たせてもらえないでしょうか?” のくだりは人力であることが重要なので本作独自になってて良かった。言い分自体は『ロードオブザリング 王の帰還』のサムなんだけど、まさかこのビジュアルであの感動の場面再現してくるとは思わないよw

『暗号学園のいろは』50話

 取り調べフロア。チームを分断されての自白の誘惑。囚人のジレンマ。めっちゃ面白かった。前回も感じたけど、微妙に暗号から離れた何かの話をしても面白い……というか暗号よりも面白いかもしれない。個人的には。今回のも、ルールが複雑そうに見えても自分自身が取れる選択肢は「自白する/しない」の2択。そして、それぞれの場合の結果は3通りで、と選択肢と可能性をリストアップしていき、その上で最適な選択を考えていくくだりとか正直好みすぎて脳内麻薬が出そうなレベル。単に暗号よりも論理ゲーム(クイズ)が好きってだけなのでは……。
 総合的な得よりも個人の得を合理的に選んでしまうという悪魔の囁きに対して、自己犠牲でぶち破る、というラストも、キャラクターの魅力を打ち出した解決法になってて良かった。謎解き(広義)そのものの魅力も大事だけど、やはりそこにキャラクターが乗っからないと漫画としては物足りないと思うので。

『魔々勇々』12話

 食い逃げ炎勇者と、アイドル星魔王。こないだのバトルもそうだったけど、コルレオが関わらない実力者同士のバトル、めっちゃ楽しいですね。バトル漫画としての基礎力を感じる。基礎にして奥義的な。
 焦点操作という地味すぎる能力を使ったバトルが今回も新鮮に展開されてたし、そこにパンチラを持ってきたのも笑う。「つい見ちゃう」という現象(一定の人にとって)であるパンチラを持ってきて、焦点を奪う星を被せてパンツを守る、という謎の攻防が面白い。謎に重層的だ。面白いし、ちゃんとそれによって足枷を斬らせる、という大真面目なバトル展開にもなっててすげぇ。
 サブタイトルの入り方もかっこよかったんだけど、それを踏まえるかのように「少女の名前を呼びながらヒーローが登場する」クライマックスになるのも超熱い。からの斬撃もかっこよかったですな。特にポーズが。正直あれは真似したくなるというか、「まだ私の中にも中二心が残っていたのか……」みたいな感慨深さ。

『ツーオンアイス』10話

 前回のラスト、言外の説明でシングル不可避だと思ったんですが、思わせぶり展開だったw いや、以前からシングルの可能性を見据えた上で選択しろ、と言われてたので話の筋としては完全に合ってるんだけど。これは連載で1週おきに感想書いてることの弊害(でもないが)って感じだろうな。一気に続けて読んだら普通に違和感がないと思う。
 新たな憧れであるロラン選手から「シングルへようこそ」という「告白」をわざわざ描いてるのが良かったですね。初対面の対応として普通に自然なものなんだけど、今の隼馬のドラマを通じて見たらもうそういう風にしか見えない。良い場面。そこで隼馬の真意に気づいたキリンクくん(中の人)が助け船を出してくれるのも良い。前回の思わせぶり描写もそうだけど、言外の描写がめちゃくちゃうまいから読み応えあって好き。
 ということでペア結成。こういうコンビとかペア結成の儀式を告白とか、果てはプロポーズ的に描くの超好きなんだけど、今回はそれでも「こんなに告白っぽくすることある?」とか思ってしまった。いや、良さの裏返し。
 そんなエモ高めすぎな描写にも思えたんだけど、それでいて涙は浮かべるだけで流さない(見せない)という一線が引かれたのも好き。こういう感動の場面だと真正面から号泣顔を見せてもいいと思うし、そういう作品も多いけど、その感情の爆発は “察せよ” というという案配で描かれる。めっちゃ良い。まぁ、涙浮かべてる時点で「バレバレですよ」という話ではあるんだが、隼馬は何も気づいてないだろうから安心だw

巻末解放区!WEEKLY週ちゃん

 12/3は初代プレイステーション発売日ということで、作中の架空ゲーム特集。面白いテーマなんだけど、計5本の中の3本が明らかに任天堂をモチーフにしてるので笑う。プレステ関係ねぇw
 そんな中、異彩を放つのが『鵺』の『リーグオオブレジェンド』風のゲーム。PCゲームというのが異彩だし、他の4本と違った「キャラクターがゲームの中に入り込む」の話になってないのも独自性あって好き。てか、明らかにガチゲーマー感が強いんだよな……。

次号予告

 もういっちょ新連載。ただしショートフロンティアはなさそうな雰囲気で残念。今週も最高だったし、結局ショートフロンティアが最高なのよ、という気分。

目次

あれ…?アゴ割れてんな…。こんな割れてたっけ?加齢で割れる…のか?
(『アスミカケル』)

 痩せて肉が薄くなったことで肉の奥底にあったアゴ割れ骨格が浮かび上がってきた可能性はありそう。アゴ割れの原理知らんけど。

先週は許可取りに担当が奔走しました。関係各所の皆様ありがとうございました
(『呪術廻戦』)

 こういうの見ると萎える……は言い過ぎだけど「そんな許可とか必要だったの……?」と驚く。自由にやってて楽しい回だと思ったけど逆に不自由さを強く感じる。あと、新人作家が同じことをやろうとしても担当に一蹴されて終わると思うので、一種の人気作家の特権なのかもしれない。まぁ、特権の使い方としてもめちゃくちゃ好印象なんだけど。

愛読者アンケート

 新連載についてと、ゴルフについて。観戦したこと、ない。テレビ中継を含めてもがっつり観たことはないな。ニュース映像くらい。プレイしたこと、ない。学校の授業でゴルフやったことある(ホールは回らない基礎練習とミニゲーム)けど、たぶん含めないんだろうな。ゴルフが好きか。どちらでもないかな。スポーツへの好印象で順位つけたらそこそこ上の方に来るけど、スポーツ全般への興味が低いので、好きと言うのはおこがましいみたいな感覚。
 ゲームの題材としてはゴルフ好きです。要するに『マリオゴルフ』と『みんゴル』。

総括

 前期の新連載が三者三様で大好きになってきたのと、ショートフロンティアが大好きなので、今のジャンプ、巻末が一番楽しいかもしれない。これで『アスミカケル』が後ろの方に来た日にはマジで誇張とかなしで巻頭周辺よりも巻末周辺のが面白いと思う。

 今週のベスト作品。読切だなぁ。『電車田中』。ショートフロンティア中でも特別変な作品が来たことへの興奮。
 次点は新連載と『アスミカケル』。

 ベストコマ。『ウィッチウォッチ』の見開き。篠原作品への偏見もあるけど、話とかキャラクターとは別に、絵の魅力で黙らせるタイプの決めショットが出てきたのが個人的に不意打ちでそういう意味でも超好き。まぁ、よく考えてみたら過去にもこういう場面はあった気もしてきた……。

 最後に今週のベストキャラ。『アンデッド』のリップ。たぶん今週一番笑ったのキャベツを切るリップなので。
gohomeclub.hatenablog.com